アクセス解析 “超” 基礎講座

新米Web担当者もこれで安心!8つのステップで始める実践アクセス解析(前半)

[特集]アクセス解析 “超” 基礎講座

アクセス解析で始めるウェブサイトの健康診断
新米Web担当者もこれで安心!
8つのステップで始める実践アクセス解析
前半:ステップ1~ステップ4

ここまでの解説で、アクセス解析が企業のウェブサイトにおいていかに重要か、そしてどういったツールがあるのかは理解できただろう。

とはいえ、いざ自分で実践するとなると不安もあるはず。ここからは実際に「どんな数字をどう見ればいいのか」をお伝えする。

初めてアクセス解析を行うWeb担当者でもつまづかないように、私たちCreatorsNetがいつも行っている8つのステップを紹介していこう。

これだけは押さえておきたいアクセス解析8つのステップ

この記事で解説しているステップ

  1. 健康診断:サイト全体の状況をおおざっぱにつかむ
  2. 来訪理由チェック:来訪元をつかんで集客のヒントを得る
  3. 入り口チェック:最初に見られるページから改善のヒントを得る
  4. 離脱率の改善:訪問者を逃がしているページを動線から見つける

次回の記事で解説するステップ

  1. コンバージョンの測定:サイトの役割を金額に換算して考える
  2. ダッシュボード機能の活用:毎日見るレポートを楽に管理する
  3. エクセルでレポート:上司への報告書をテンプレートでつくる
  4. さらに詳しい解析:アクセス解析コンサルティングを受ける

ステップ1 健康診断:
サイト全体の状況をおおざっぱにつかむ

アクセス解析で毎日見るのはサイトの状況を知るため。健康診断でいうと毎朝の血圧チェックのようなもの。毎日のチェックは簡単にすませよう。サイトの全体的な状況をおおざっぱにつかめばそれでいい。このための指標は次のたった2つだ。

  • 総ページビュー数
    (Google Analyticsでは[ユーザー]>[ユーザーの傾向]>[ページビュー数])
  • 訪問者数
    (Google Analyticsでは[ユーザー]>[ユーザーの傾向]>[ユニークユーザー数])

この2つの数字は、上司や事業部から「うちのサイトにはどのくらいの力があるの?」と聞かれたときに答える数字だ。テレビ番組の視聴率や新聞の発行部数のようにわかりやすくていい。

しかし、絶対に忘れてはいけないことが1つだけある。それは“毎日のサイト運営日記をつけること”だ。日記といっても図1のようなものだ。アクセス解析ツールから出力された総ページビュー数のグラフをエクセルに貼り付け、その横に日記を並べたものである。書く内容は「サイト内のできごと」と「サイト外のできごと」の2つだけでいい。

「サイト内のできごと」には、次のようにサイトに手を加えた履歴をもれなく記録していく。

  • 10月1日:2009年採用サイト・オープン。トップページに採用開始のお知らせ掲載
  • 11月3日:商品「○○」の不具合に関するお詫びページ開設。トップページ「What's New」に赤字で表示
  • 12月1日:新商品「××」のディレクトリ“/products/xxxx”をオープン。トップページのメインビジュアルからリンク

もちろん記録は詳細であるにこしたことはないが、グラフの変化の説明のためなので、簡潔なほうがいい。大切なのは、サイトの改造やコンテンツの追加がアクセス数にどのような影響を与えたのかがわかるように書くことだ。

同様に、「サイト外のできごと」の欄には、次のような内容などを書き込んでおく。

  • 10月1日:10月分Googleアドワーズ広告を開始
  • 10月8日:メルマガ発行××××部
  • 12月1日:××さんのブログで紹介される

これは外部の影響でアクセスに変化があることを確認するためのもの。「Googleアドワーズ広告を開始」「メルマガ発行」などは自分たちで手配するのですぐに記録できるが、「××さんのブログで紹介される」というのは当日にはわからないかもしれない。これについては、事実が確認されたらあとからでも追記するようにする。

日記をつけるのは、このような記録がないと、ページビュー数や訪問者数に変化が起こってもその原因がわからないからだ。これを日課にすると、いろいろな変化を感じられるようになり、アクセス解析もだんだん楽しくなってくる。SEOは効果がすぐに体感できるものではないけれど、キーワード広告には即効性があることや、せっかく広告を出したり、ブログで話題になったりしても訪問者数の増加の割にページビューが伸びていかないことなどがわかってくるのだ。

図1 ウェブサイト運営日記の例(図はクリックで拡大)
サイトに関する毎日のできごとを簡単なメモとして日誌風に残しておいて、それぞれの日に対応するページビュー数を横に並べていけば、アクセス数が変化した理由がすぐにわかる。ちょっとしたことのメモを毎日つけておくのがポイントだ。

ステップ2 来訪理由チェック:
来訪元をつかんで集客のヒントを得る

どんなに良いサイトを作っても、多くの人に見てもらえなければ意味がない。

集客を向上させる手段を考えるには、現状であなたのサイトに来る人はどこから来ているのか。どんなニーズを持ってやって来るのかをつかむ必要がある。それが来訪理由のチェックだ。

使うデータは次の3つだ。

  • 検索キーワードとフレーズのランキング
    (Google Analyticsでは[トラフィック]>[キーワード])
  • 検索エンジンのランキング
    (Google Analyticsでは[トラフィック]>[検索エンジン])
  • 検索エンジン以外のリンク元ランキング
    (Google Analyticsでは[トラフィック]>[参照サイト])

1つ目のデータ「検索キーワードとフレーズのランキング」は、訪問者がどんなキーワードを検索エンジンに打ち込んで来ているのか知るためのものだ。

キーワードとフレーズが分かれている場合、フレーズは「冷蔵庫 コンパクト」など、単語と単語の間にスペースを入れて複数の単語で検索を行う場合の言葉で、キーワードはそれを分解して「冷蔵庫」のような単一語として集計したものだ。また、「直接アクセス」だとか「No Referer(ノーリファラー)」だとか表示されている場合、これはURLを直接打ち込んだり、お気に入りから来てくれたりした来訪数だ。

アクセス解析でわかるのは「どのキーワード、フレーズが来訪者を呼び込むことに成功しているのか?」「どの検索エンジンの対策ができているのか?」という“成功パターン”だけだ。サイトのカイゼンのためにアクセス解析をするのなら、“成功パターン”だけでなく“失敗パターン”をもつかむことが必要だ。問題点がはっきりしないと解決もできない。

どこのサイトでもキーワードの上位は会社名、ブランドやサービス名が並んでいて、これがそれ以下のキーワードを大きく引き離しているはずだ。「松下電器」とか「Panasonic」「VIERA」と検索エンジンに打ち込む人、これはもともとあなたの会社の製品に興味がある「指名客」だ。これに関しては来訪者を獲得できて当たり前である。だが、実際に来てほしいのはまだ指名客になっていない人、つまり、検索エンジンに「液晶テレビ」とか「冷蔵庫」といった幅の広い一般名詞のキーワードを打ち込む来訪者だ。まだどの会社の製品情報を見てみようか決まっていないうちに取り込みに成功したいものだ。

iPod
薄型テレビ
エアコン
エスプレッソマシーン
液晶
オーブン
オーブントースター
オーブンレンジ
加湿器
換気扇
乾燥機つき
乾電池
空気清浄機
クーラー
コーヒーメーカー
充電器
食洗器
除湿器
除湿機
食器洗い機
図2 来訪者を呼び込みたいキーワードのリスト

Web担当者は、各事業部と相談して、来訪者を呼び込みたいキーワードやフレーズ、来訪につなげたい参照元サイト(たとえばkakaku.com)を書き出してリストを作ってみよう。たとえば図2のような感じだ。

このリストの中位か下位にあるキーワードやフレーズのうち、アクセス解析で見た検索キーワードランキングに現れていないものに関して集中的にキーワード広告やSEOを実施すると、アクセス数は上がりやすい。希望リンク元としてブログが挙がった場合には、自社サイト内にブログを設置して、有力ブログにトラックバックを実施する、などの対策を取ることができる。

2つ目のデータ「検索エンジンのランキング」では、Yahoo!とGoogle、どちらから来ているのかを見る。ここで決める方針は、キーワード広告の費用配分だ。

Web担当者の悩みの1つに予算不足があったが、予算が限られているなかでウェブサイトの集客をするのに無駄はできない。とはいえ、キーワード広告はウェブサイトの集客策として欠かせない手段である。Yahoo!とGoogleにどのように費用を分けていくのか、たとえば一方に実施する予算しかない場合は、どちらを選ぶかが重要である。勘ではなく、アクセス解析で求めた来訪者の検索エンジン利用率や検索キーワードに裏づけされたデータを基準に、自社の状況を反映して予算組みをしてみよう。

3つ目のデータ「検索エンジン以外のリンク元ランキング」では、どんなサイトやブログで紹介されているのかを知る。

このランキングを日々追って見ていくと、「ステップ1」で紹介した「××さんのブログで紹介された」というのも突き止められる。判明したら忘れないうちに日記に追記する。また、化粧品なら「@cosme」、家電製品なら「kakaku.com」などと、業種ごとに有力なポータルサイトがあり、ここでの扱われ方は商品やサービスのクチコミ情報に影響を与える。どんなところでどんな風に紹介されているかを知っておくのもWeb担当者の重要な職務だ。

ステップ3 入り口チェック:
最初に見られるページから改善のヒントを得る

せっかくサイトにお客さんが来訪したら、サイトにあるものをよく見ていってほしい。ところが、せっかく来訪してくれているのにお客を追い返しているページが存在する。それを発見するのがこのステップだ。使うデータは次の2つ。

  • 入り口ページのランキング
    (Google Analyticsでは[コンテンツ]>[閲覧開始ページ])
  • 1ページだけ見られたページ
    (Google Analyticsでは[コンテンツ]>[閲覧開始ページ]の[直帰数]列)

ウェブサイトの設計段階では、来訪者の入り口をトップページだと想定することが多い。確かにBtoBビジネスの会社では、会社名での検索が検索キーワードのほとんどを占めるので、必然的に検索エンジンではトップページが紹介されることが多く、トップページの入り口率が高い。

ところが、BtoCの会社ではトップページを入り口に訪れる来訪者はせいぜい50%止まりである。SEOに力を入れているある会社の場合では12.5%(来訪者全体の1/8)というケースもあった。残りの来訪者は、検索エンジンなどから商品ページなどの目的のページに直接入ってきて、トップページは経由していない。だからこそ「入り口ページのランキング」をチェックすることが必要なのだ。

さらに、この入り口ページのなかでも、次の行動に来訪者を誘導していないページを突き止めるのが「1ページだけ見られたページ」のリストである。これは、ツールによっては「直帰率」という用語を使っているケースもある。

さて、ここで自分のインターネットでの行動を思い返してみよう。検索エンジンでキーワードを入力すると何百、何千ページもの候補が出てくる。1ページ目や2ページ目がダメでも他にいくらでも候補があるから、検索結果画面で紹介されたページに行っても、自分のニーズとちょっとでもズレていると感じると、すぐに“戻るボタン”を押して検索エンジンのページに戻ってしまうのではないか。

たとえば渋谷駅周辺のマンションに引っ越したいと思って「マンション 渋谷」と検索する。検索結果上位に出てきたページを訪れてみると、ページの上部に掲載されている物件が同じ「渋谷区」でも「笹塚」や「初台」のマンションばかりだと「ちがう」と感じて検索結果ページに帰ってしまうのだ。制作者としては「ページを下までスクロールすれば渋谷駅周辺の物件も掲載されているのに」と思ってしまうが、ユーザーはそうしてくれないのが実情だ。こういうページは実にもったいないページである。店頭までお客は来ているのに追い返してしまっているのだ。こういうもったいないページをカイゼンすることが「LPO(ランディングページ最適化)」である。

SEMなどの広告を実施すると訪問者数は向上する。ところが、この訪問者数に応じてページビューが増えていかない場合は、LPOを施す必要がある。この例だと、ページ上部に渋谷駅周辺の物件を掲載して次のアクションを起こしてもらうように入り口をカイゼンしよう(物件詳細ページや問い合わせページに誘導するなど)。

ステップ4 離脱率の改善:
訪問者を逃がしているページを動線から見つける

さて、ここから先はどんなアクセス解析ツールでもできるというものではない。サイト内の来訪者の動線に問題がありそうでそれをつかみたい人は、この機能が充実しているツールを選ぼう。せっかく来訪してくれた人がサイト内でどんなアクションをしているのかを知り、サイトの構造やクリエイティブのカイゼンに役立てるのである。

たとえば、来訪者の動線をビジュアル表示できるツールであれば、図3のように表示できる。サイト内と外部のどこからこのページに入り、どのページに出て行っているのかを表示してくれる。Google Analyticsならば[コンテンツ]>[概要]から[ナビゲーションサマリー]をクリックすればそれなりに確認できるが、高機能ツールに比べると機能は劣る。事前に設置したシナリオの検証ができるのみだ。

この機能を使って、来訪者はあなたのサイトのなかでどんな行動を取っているかをつかむのだ。ここで特に重要なのは「離脱率」だ(Google Analyticsでは[コンテンツ]>[離脱ページ])。多くのWeb担当者はそれぞれのコーナーごとに訪問者の行動を想定してページを作っているものと思う。たとえば、次のような流れを想定してページを作成しているはずだ。

図3 来訪者の動きをビジュアル表示できれば、来訪者がどこからやってきて、どのページに移動したかをイメージしやすくなる(画面はSiteCatalyst)(図はクリックで拡大)。
  1. 商品紹介トップ
  2. 商品ラインナップ
  3. 商品Aの詳細ページ
  4. カタログ請求ページに行って、情報を入力
  5. 確認ページ⇒カタログ請求ボタンをクリック
  6. サンキューページ

来訪者がこの想定どおりに行動してくれているかどうかを確認するのである。

図4にあるような画面(「フォールアウト」や「目標到達プロセス」)を見ていると最初に発見するのが「離脱率の高いページ」だ。目的の資料請求ページまで順調に誘導してきたのに直前で離脱するページ、つまりこのサイトから出て行ってしまうページのことである。

図4 カタログ請求などのコンバージョンにたどり着くまでの間にある、離脱率の高いページをカイゼンしてコンバージョン率を上げよう(図はクリックで拡大)。

図4の例で説明しよう。この場合は4ステップで遷移するシナリオを描いている。1段階目の商品トップページには25万ユーザー以上もの大量のアクセスを集めていて、そのうち2段階目の商品ラインナップに移動したのは約15万ユーザーである。60.1%が移動してくれたのでよしとしよう。しかし次からのステップが問題で、2段階目から3段階目には21%しか移動しておらず、最後の3段階目から4段階目には0.4%しか移動していないことがわかる。全体で見ると1段階目に来たユーザーの99.9%もとりこぼしてしまっている。気がつくと最初に25万以上もいた来訪者のうち、誘導したい4のカタログ請求ページまできてくれたのはたった133人だ。これは大問題だ。

ではその原因はどこにあるのか。原因を追求するために離脱率の高いページを実際に見てみて、その原因を考えると、次のようなものが想像される。

  • デザイン(インターフェイス)が悪い
  • 質問項目が多い
  • カタログ請求ページには「品番を入力してください」という表現があり、品番を覚えていないとどのカタログを請求していいのかわからない
  • 個人情報保護方針がきちんと書かれていないので、情報を入力するのが不安になる
  • カタログ請求という行為そのものが嫌な人が多い

これをカイゼンに役立てるのである。関係者と理由を想像し、これをもとにページを修正してしばらく待ってから再度アクセス解析をして、カイゼン前と比較するのだ。

この際に、大切なのは、最初のうちは一度に1個の原因をつぶしていくようにすることだ。複数のことを一度に変更すると、結果として離脱率が下がってサイトの質が向上しても、何が幸いしてカイゼンが達成されたのかがわからないので、最初の週にまずはデザインを修正して数値を比較してみる。これで向上しないならデザインは元に戻して今度は質問項目を減らしてみる。こういうことを繰り返していくと、カイゼンのポイントが見えてくるようになるのだ。

ステップ3で学んだ「入り口ページ」のカイゼンでも、同じように複数の原因を想定して一個一個つぶしていく方法をとっていく。

離脱率を絶対に低く抑えたいのが各カテゴリのトップページ(たとえば商品紹介のトップページや会社案内のトップページ)だ。せっかく商品に興味を持って商品紹介のトップページまで来てくれているのにここで追い返してしまうのはもったいない。

◇◇◇

次回の記事ではステップ5~ステップ8と、さらなる「カイゼン」のヒントを紹介する。

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