成長のDNAをプロダクトに埋め込む「グロースハック」とは

「グロースハック」に関する基本情報を整理しながら、手軽に実行できるWebサイトにおける応用方法についてもご提示しています。
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近年、シリコンバレーをはじめ、IT・Web業界で注目されているキーワードの一つに、「グロースハック(Growth Hack)」があります。FacebookやTwitter、Dropbox、Hotmailなど、現在名の知れたこれらのサービスは、いずれもグロースハックによって驚異の成長率を実現してきたと言われています。しかし、そもそもグロースハックとは何なのか、実践するならどのようにするかなど、未だにイメージが湧かない方も少なくないかと思います。本コラムでは、この「グロースハック」に関する基本情報を整理しながら、手軽に実行できるWebサイトにおける応用方法についてもご提示したいと思います。

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「グロースハック(Growth Hack)」とは?

「グロース(growth)」は「成長」で、「ハック(hack)」は「(プログラミングに)取り組む」という意味もあり、「グロースハック」は、成長させる仕組みを製品やサービスに取り込むことを指します。更に詳しく言いますと、製品・サービスの利用に関するデータや利用者の声などを解析し、成長を妨げる要因を突き止め、改善施策を継続的に行い、効果のあるものを次々と取り組んでいくことによって、製品・サービス自体を成長させていくことを、「グロースハック」と呼びます。また、このような仕掛けを実現する“成長請負人”は、「グロースハッカー(Growth Hacker)」と呼ばれています。

有名な例を挙げますと、Twitterはデータから5~10人をフォローしたユーザーの定着率が高いという傾向が判明し、初回登録時に5人をフォローさせるように導線を設置したところ、MAU(ある月に1回以上活動のあった利用者の数)が4倍になったそうです。

実はこの「グロースハック」という言葉は、Dropboxの市場拡大を手掛けたアメリカQualaroo社CEOであるショーン・エリス(Sean Ellis)が、2010年頃に「グロースハッカー(Growth Hacker)」を新しい職種として名付けたことで、世界に広まった由来があります。従来のマーケティングに留まらず、データ分析や開発技術など、多様な分野の知識を持ち合わせる人材への需要が、「グロースハック」の浸透とともに高まりつつあります。

グロースハックが「今」必要な理由と前提条件

グロースハックが今注目されるようになっている背景には、現在の市場環境の特徴があります。構想から商品化されるまでの期間がどんどん短くなっており、かつ類似品の多い競争が激しい市場においては、消費者の「気の移り変わり」が起こりやすくなり、全体的に製品・サービスのライフサイクルが短くなっています。グロースハックは、製品・サービスが完成した後に行うマーケティング活動ではなく、製品・サービスの形成段階から定性的・定量的なデータから市場の反応に基づき、コストを抑えた素早い改善を繰り返し、製品・サービスそのものを進化させていくやり方です。

しかしそもそも、その製品・サービスが消費者に必要とされなければ、いくらグロースハックに力を入れたとしても、成功は見込めないでしょう。ここでよく言及されるのは、「Product-Market-Fit」、略して「PMF」です。この言葉の生みの親であるマーク・アンドリーセン(ブラウザーNetscape Navigatorの開発者)は、“Product/market fit means being in a good market with a product that can satisfy that market.”と主張しています。つまり、良い市場を狙っていて、かつその市場のニーズを満たせる製品を持っていることが、ビジネス成功の前提条件になります。PMF状態であるかどうかを検証するには、その製品・サービスがなくなると「非常に困る」と答える人がユーザー全体でどれ程占めるかという割合を測るという方法があります。ショーン・エリスが、その割合が40%に達しないと、ビジネスを拡大するには十分な市場が確保できないという見方を示しています。

効果的なフレームワーク――「AARRRモデル」

グロースハックの実施において、シンプルかつ強力なフレームワーク「AARRRモデル」があります。「AARRR」(読み方:アー)は、ユーザー行動の状態をAcquisition、Activation、Retention、Referral、Revenueという5つのステップに分け、その頭文字を組み合わせたものです。

  • Acquisition【獲得】 - 新規ユーザーに来てもらう
  • Activation【活性化】 - ユーザーにアクションを起こす動機を与える(良い体験をしてもらう)
  • Retention【継続】 - ユーザーをリピーターに変えていく
  • Referral【紹介】 - 受けられない。運用者にはある程度のリテラシーが求められる
  • Revenue【収益】 - ユーザーに課金行動を取ってもらい収益化に繋げる

このモデルの各フェーズのユーザー数の変化を図で表現すると、ファネルのような形になります。最終的にコンバージョンするユーザー数を増やすには、入口である「Acquisition」を大きくするのが容易に思いつきますが、しかしフェーズごとに離脱するユーザーが多いままだと、施策の費用対効果がどんどん薄れてしまいます。あらゆる手法で収集したデータをこのAARRRモデルを使って可視化することによって、ボトルネックの把握やフォーカスすべきポイントの発見に役立ちます。いかに広告やプロモーションに頼らず、最小限のコストで効果的な改善を素早く行い、収益力を上げていくことが、グロースハックの考え方の中核になります。

Webサイトにおけるグロースハック

グロースハックはWebでもリアル店舗でも応用できますが、Webサイトのビジネス価値がますます重要となっている今、Webサイトにおけるグロースハックが進んでいます。成長を妨げる要因を発見し、仮説を立てるには、データが必要です。データの収集方法として、リアルではユーザー行動観察調査やグループインタービュー(参照コラムはこちら)といった手法があり、Webではアクセスログ解析やヒートマップ分析(参照コラムはこちら)などの手法が挙げられます。

「集まったデータを利用してグロースハックを試したいが、どこから着手すればいいかは分からい」という方には、「A/Bテスト」をおすすめします。A/Bテストは、Webサイトの各要素(レイアウト、メインビジュアル、ナビゲーション、キャッチコピー、アクションボタンなど)を、仮説に基づいて作成した異なるパターンで比較検証を行う手法です。ごく一部の調整だけで検証ができ、しかもより効果的なパターンが判別できるので、手軽に始められるグロースハックの重要なツールとして多く実践されるようになっています。

A/Bテストを通じてより正確な結果を得るためには、対象ページにある程度の流入が確保できている状態が望ましいです。検証の流れとしては、検証する要素だけ異なるページを複数用意し、他の部分は同じ条件で統一します。来訪者にそれぞれのページを提示し、一定期間においてテストを行い、どのパターンが最もコンバージョン率が高いかを検証します。

A/Bテストは1回きりのものではなく、違う要素で継続的にテストを行い、優れている案を取り入れていくことによって、理想的なWebサイトの姿にどんどん近づくことが可能になります。

まとめ

グロースハックにおいて、定性的・定量的なデータの分析が不可欠であり、その手助けとなるツールや技術も数多く登場しています。しかし、テクニックより重要なのは、ユーザーが何を望んでいるか、ユーザーのために何ができるかを考え続ける姿勢です。また、グロースハックの道は決して平坦ではないことも忘れてはいけません。成長のトリガーを見つけるのが大変難しいかもしれませんが、小さな改善から着手し、地道に継続していれば、確実に製品・サービスをより良い方向に変えていけるでしょう。早速A/Bテストのような手軽なものから、初めてみてはいかがですか?

 

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