企業ホームページ運営の心得

楽天カードマンに学ぶ数字に強くなる方法

数字に強くなる近道は「数字の作り方」を学ぶこと
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の369

数字に強くなる方法

Web担当者はもちろん、社会人にとって「数字に強くなる」ことは大切です。数字に強いとは、数字を正しく理解する能力、いわば「数字リテラシー」で、これが低いと数字によって騙されます。なぜなら数字は意のままに作り出せるからです。

今年の4月、局所的に話題となった「与沢翼 秒速で破産」というトピックをご存知でしょうか。『秒速で1億円を稼ぐ条件(フォレスト出版)』という著書をきっかけに、新時代のミリオネアとして、バラエティ番組を中心に注目を集めていた与沢翼氏が、税金の滞納を理由に破産寸前となったといいます。彼についてここでは掘り下げませんが、この「秒速」とは作りだされた数字。そして数字に強くなれば「秒速で億を稼ぐ」に騙されることはありません。

数字に強くなる近道は「数字の作り方」を学ぶこと。種や仕掛けを知っていれば、「超魔術」や「メンタリズム」がただの「手品」に見えるようなものです。

秒速で稼ぐという嘘

それでは「秒速」の種明かしです。秒速とは一般的に移動速度を指しますが、書籍名そのままに「1秒で1億円稼ぐ」と定義し、1日働き続けたとすると収入は次のようになります。

  • 1分(60秒)=60億円
  • 1時間(3,600秒)=3,600億円
  • 1日(86,400秒)=8兆6,400億円

iPhoneでおなじみ、アップルの2013年度通期の売上が1,709億1,000万ドルです。1米ドル=100円で換算して17兆910億円とすれば、およそ丸2日(1日と23時間28分31秒)で「アップル超え」をするのが「秒速で億」という数字です。これが本当ならば、バラエティ番組「有吉ゼミ」ではなく、米国の経済誌『フォーブス』の出番です。

1秒考えれば不可能とわかる話をキャッチフレーズとして使い拡散した、週刊誌やテレビ局の姿勢には重大な問題がありますが、これは、初級レベルの「数字の作り方」。

一番の数字を選ぶ

フルマラソンで4時間を切り完走することを「サブ4(サブフォー)」と呼びます。フルマラソンで1つのステータスとなる目標であり、およそ5分41秒/kmのペースで走り続けなくてはなりません。

アラフォーをはるかに超えた私ですが、「サブ4」レベルで走ることが可能であることは、執筆に当たり実験済みです。健脚を自慢しているのではありません。「サブ4」とは100m走なら34秒、50mなら17秒、25mなら8.5秒で実現する速度。老体にむち打ち25mで達成しました。

これが私の実践した「秒速」の正体です。「フルマラソンじゃないではないか!」との指摘はもっともですが、短い距離による計測、偶然を含めた最大風速から「最大値」を「数字」に採用する方法で、超有名企業でも使われています。

たとえば、川平慈英演じる“楽天カードマン”のCMでは、「8秒に1人」がクレジットカードに申し込んでいるとうたいます。8秒のカウントに合わせて増殖する楽天カードマンが、8秒に1人をより印象づけます。

楽天カードマンのカラクリ

YouTubeの公式映像を、27インチのiMacのフルスクリーンで見て気がついたのですが、楽天カードマンが2人となり、

8秒に1人申込中

と大見出しが表示されている画面右下には、とても小さくこうあります。

※2013年9月~11月申込人数を3か月間の秒数で計算

つまり、先ほどの例と同じく、一瞬の記録から抽出された数字だということです。

楽天は2013年7月から11月末まで、7,000~10,000ポイントが貰える「楽天カード新規入会&エントリーキャンペーン」を繰り返していました。そのなかでも9月からの申込件数を採用したのは、プロ野球球団、楽天イーグルスの優勝前後の盛り上がりから、数字が跳ね上がったとみるべきでしょう。その偶然の幸運から得た、「瞬間最大風速(最大値)」を数字として切り出しているのです。

さらに都合の良い数字をゲット

ちなみに、最大値は「チャンピオンデータ」とも呼ばれます。「都合の良い数字」と捉えられることもありますが、事実を利用しているので「やらせ」や「捏造」ではありません。本当の全部ではないだけです。

さらに楽天カードマンから「数字の作り方」の基本を学ぶことができます。8秒に1人とは毎日1万800人、一年では394万2千人で、日本の全人口を網羅するには30年以上かかってしまいます。これでは勢いが感じられません。数字を作るうえでの基本は「印象が悪い数字は使わない」ことです。販促担当者からすれば、毎日1万人以上の申し込みは誇るべき手柄ですが、ここをグッと我慢するのが「現場の心得」です。

楽天カードマンの例では、さらに「申し込み中」というフレーズに注目します。クレジットカードには登録審査があり、すべての申し込み者が実際にカードを手にできるとは限りません。しかし、わざわざ説明しなければ、「申込者数=利用者数」と錯覚する消費者は多く、これは「ランキング」と同じ「錯覚」を利用したテクニックです。

数字に強くなるためには

今回紹介した「数字の作り方」は初級編です。もっと狡猾な方法は数多く、それは日常に溢れていますし、具体的には「楽天市場でジャンル別1位を取る方法」だってありますが、これはまた別の機会に。

今回は初級者向けにまとめた「数字に強くなる」ための準備体操。最後に「まとめ」の問題を1つ。

Q:もてなしのために「豚の丸焼き」を用意しました。もてなしとして量は適切でしょうか?

身内が集まる数人のパーティーなら食べ尽くすのは困難です。しかし、1000人を超える大イベントなら、参加者すべての小腹を満たせるかどうかも疑問です。しかし、そもそも丸焼きにされた豚の頭数が示されていないので、適正量かの判断を下すことができません。つまり正解はこう。

A:回答できない

数字を作るには1つでは足りません。2つ以上の数字が組み合わさることによって、初めて「数字の意味」が確定します。「秒速で億」「サブ4」、そして「楽天カードマン」も同じです。数字を見たとき、瞬時にもう1つ(以上)の数字に気がつき、あるいは隠されている数字を見つけ出すセンスが、「数字に強くなる」ということです。

今回のポイント

秒速なんて簡単だ

2つ目の数字を意識する

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