スマートフォンレポート

スマホユーザーは有料アプリをどんな基準で選ぶのか? どんな使い方をするのか?

スマートフォンの有料サービスに対してユーザーはどのような基準で選択し、利用しているのか、またどのようなサービスであれば有料の価値を感じてもらえるのか

この記事は、ドコモ・ドットコムが発行するモバイルビジネス・マーケティング情報誌「スマートフォンレポート」の一部を、Web担当者Forum向けに特別公開したものです。

スマートフォンレポート

スマートフォン利用が更なる広がりを見せる昨今、スマートフォンに対応したサービスは有料、無料にかかわらず増加・多様化の一途を辿っている。このような状況のもと、有料サービスに対してユーザーはどのような基準で選択し、利用しているのか、またどのようなサービスであれば有料の価値を感じてもらえるのか。この点について焦点を当てつつ、スマートフォンにおける有料サービスの利用動向とその意識について調査した。

今回は2014年5月に発表された「スマートフォンレポート vol.12」から、調査報告3「スマートフォンにおける有料サービスの利用動向/意識調査 ~スマートフォン時代に求められる有料サービスとは?~」の調査レポートをお届けする。

スマートフォンにおける有料サービスの利用状況

まずは、スマートフォンの有料サービスにおける利用実態について報告したい。2014年4月時点で、スマートフォン所有者における有料サービス利用経験率は約3割となっている(図1)。

図1:有料サービスの利用経験

利用の高いサービスジャンルとしては、「ゲーム」「無料通話メールサービス(LINE等)のスタンプ素材」「音楽」が挙げられ、それぞれ30%を超える利用経験があった。特に「ゲーム」は50%を超える利用経験が示されるなど、半数以上に課金経験がある状況となっている。次いで、「天気」「乗換/地図/交通」「コミック/電子書籍」において、20%を超える利用経験が示された。

「無料通話メールサービス(LINE等)のスタンプ素材」を除き、フィーチャーフォン時代より数多く利用されてきたサービスジャンルが上位に並んだ格好となり、ジャンル単位で考えれば、従来の傾向がまだ引き継がれている格好となる(図2)。

図2:利用経験のある有料サービスジャンル(上位20ジャンル)

次に、有料サービスの平均利用期間について見てみると、「ゲーム」「エンタメ系(ゲーム以外)」「動画」といったエンタメ系コンテンツにおいては「1週間未満」と回答する人が最多となり、比較的短期で利用するユーザーが多い結果となった(「わからない」という回答を除く)。

とはいえ、次に多い回答が「1年以上」となっており、気に入った場合は長期利用するといった傾向も感じられる。故に、長期利用してもらうための工夫をいかに盛り込むかが重要であるとも言えそうだ。

一方、「便利ツール系」「天気/ニュース系」といった情報、ツール系ジャンルにおいては、「1年以上」が最多回答、「1週間未満」がそれに続く回答になるなど、エンタメ系とは正反対の傾向を示している。

情報、ツール系ジャンルにおいては、一度気に入ると長期利用するユーザーが多い、もしくは長期利用を想定して課金登録するケースが多いのではと想定される。どちらにせよ、サービス内容を充実させつつ、その事実をわかりやすくユーザーに伝えることや、適正な価格を見極めつつサービス提供するといった環境整備など、少しでも長い期間の利用を促す施策展開を充実させたいところである(図3)。

図3:有料サービスの平均利用期間

有料サービス利用の決め手とやめる理由

では、サービスに対してお金を支払うという意思決定において、何を最終的な決め手としているのか、逆にどのような事を理由に利用しなくなるのかについて触れてみたい。

まず、有料サービス利用の決め手についてだが、「無料で利用してみて、良いサービスであると感じた」という回答が最多となっており、無料での利用機会が重要な要素になっている事がわかる。図には表記していないが、特に50~60代にこの傾向が強く出現しており、高年齢層になるほどサービスを慎重に吟味する姿勢がうかがえる。

次いで「他ユーザーのレビュー・評価」「価格の適切さ」といった理由が続いているが、男性は「他ユーザーのレビュー・評価」を、女性は「価格の適切さ」をより重視する傾向を示している。

当社の過去の調査結果などからも、サービス利用者が他ユーザーの評価・レビューに影響を受けるといった傾向や、価格については女性を中心にシビアに精査するといった傾向が出現していたが、本調査からも同様の傾向が感じられる結果となった(図4)。

図4:有料サービス利用の最終的な決め手(上位20項目)

一方、利用をやめた(退会した)理由についてだが、「使わなくなった(退会した)有料サービスはない」という回答を除くと、「サービス内容に飽きたから」「サービスが不要になったから」など、サービス自体の魅力や必要性の低下によるものと、「利用料が高かったから」といった価格に対する不満が主要因となっている。

スマートフォンにおいては多数の無料サービスが展開されていることもあって、他の無料サービスに乗り換えたからという回答が多いのではと想定していたが、実際はサービス自体に対する飽き、必要性の無さ、それに伴う利用料への不満が利用停止へとつながっている模様である。いかにしてサービスの品質向上と適切な価格設定を訴求できるかが鍵といえよう(図5)。

図5:有料サービスの利用停止理由

また、有料サービスを利用しようと意思決定したにも関わらず、結局利用しなかったという「断念経験」についても調査してみたところ、実に6割近いユーザーに断念経験があった。その要因としては、「思っていたより価格が高かったから」が最多となっており、ここでも適切な価格設定の重要性が示されている。

また、10代を中心とした「クレジットカード登録が必須だったから」といった回答や、男性にやや傾く形で「会員登録時の入力項目が多かったから」「会員登録のフローが長くて面倒だったから/分かりにくかったから」といった理由が続いた。利用価格に加え、決済手段の多様性、入力の簡便性、わかりやすさなどをしっかりと整備しておくことの必要性も感じられる(図6)。

図6:有料サービス利用断念経験と理由

今後の有料サービスに求められるものとは

スマートフォンの有料サービスにおいては、どのようなニーズがあり、どのような工夫が必要なのだろうか。ここからは、スマートフォン有料サービスに対する今後の意向などについて考察を進めていく。

電子書籍や電子新聞、音楽・動画配信サービスなど既にデジタル化が進み、サービス提供されている有料コンテンツは多岐にわたっているが、これまで利用していたリアル商品からデジタルサービスへの移行意欲について聞いてみたところ、全体的にはまだそれほど高い移行意欲は感じられない結果となった。

とはいえ、図には示していないものの、10代においては「音楽」「ドラマ」「コンサート映像」「映画」などの利用意向が高く出ていた他、男性40代以降においては「新聞」が高いなど、年代別に異なる特色が現れている。リアル媒体からデジタル媒体への移行については、このような年代別のニーズの高まりとともにゆるやかに進むのではないかと想定される(図7)。

図7:今後切り替えてみたいデジタル有料サービス

反対に、デジタル媒体に切り替えない理由について聞いてみたところ、「電子版だと読みにくい・見にくい」「スマートフォンでの利用だと電池残量が気になる」「画面が小さいから/もっと大きな画面で見たい」といった視覚面、電池消費に対する意見が目立っている(図8)。

図8:オンラインの有料サービスにスイッチしない理由

また若年層を中心に「電子版だと形に残らないため、所有感がない」といった理由も上位に挙がっており、形あるものに対するこだわりも感じられた。好きなアーティストや作品などといった実際の「もの」に対するこだわりについては致し方ないところだが、前述の読みにくさや見にくさ、電池消費などについての不満は、今後スマートフォン利用に慣れるに従って徐々に解消されていき、それに伴ってデジタルサービスへの移行が進んでいくのではないかと想定される。

図7で示した「今後切り替えてみたいデジタル有料サービス」の結果においても、未だサービスを利用したことのないユーザーが多数存在し、実際の利便性を享受した経験が少ないと思われることからも、いかにしてサービスを試してもらい、その利便性を感じてもらうか、という点も重要と思われる。

更に、今後「有料でも使ってみたい」スマートフォンのサービスについて聞いてみたところ、「音楽鑑賞」「ゲーム」「映画視聴」などといった趣味やエンタメ系ジャンルが上位となったが、男性においては、「語学」「貯蓄/資産運用」「仕事/ビジネス」「株取引/FX」などといった自己啓発やビジネスに関連するジャンルへの意向もやや高く出現した(図9)。

図9:今後使いたい有料サービスジャンル(上位20ジャンル)

また、自由回答にて「運動と連携した健康アプリ(男性・44才)」などといったヘルスケア関連や、「子どもがぐずった時に役立つコンテンツなど、子育てについての内容が充実している物(女性・27才)」といった育児に関連する意向も散見されている。

今後は趣味やエンタメなどにとどまらず、ビジネスやライフスタイルなど幅広いジャンルや生活をより便利にしてくれるサービス、専門的な情報や機能を持ったサービスなどの利用ニーズが更なる高まりを見せるのではないか。

このようなニーズを鑑みつつ、適正な価格設定やサービス内容の充実、お試し利用の設置などにより、より多くの有料サービス利用機会、並びに長期に渡る利用を促したいところである。

調査対象15歳以上69歳までのスマートフォンを所有する男女個人
/スマートフォン課金サービス利用経験者
調査地域全国
有効回答数600サンプル
※事前調査における「スマートフォン課金サービス利用経験者の性年代別出現割合」を構成比として、下記の割り付けにて回収
10代20代30代40代50代60代
男性286976674427
女性388569503215
661541451177642
調査実施期間2014年4月11日(金)~4月14日(月)
調査方法インターネット調査
調査実施機関株式会社ドコモ・インサイトマーケティング

この記事は、ドコモ・ドットコムが発行するモバイルビジネス・マーケティング情報誌「スマートフォンレポート」の一部を、Web担当者Forum向けに特別公開したものです。

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