初代編集長ブログ―安田英久

抑える/押さえる、超える/越えるの使い分け! 要点をおさえるの漢字は?

「抑える/押さえる」の意味の違いがわかりますか? たとえば「要点をおさえる」や「ポイントをおさえる」の場合、どちらの漢字が正しいでしょうか?「合理化をはかる」の漢字は「図る/測る/計る/量る」のどれを使う? 「乗りこえる」は「乗り越える/乗り超える」? 「予想」は「超える/越える」?「併せて/合わせて」も使い分けが難しいですよね。こうした異字同訓を文化庁が公開。133例を紹介します。
Web担のなかの人

「越える・超える」「挙げる・上げる」「抑える・押さえる」「計る・測る」「答える・応える」「勧める・薦める」……どんな意味のときに、どの漢字を使うのが正しいのでしょうか。

こうした使い分けの難しい「異字同訓」(訓読みが同じの違う文字)漢字を、どう使うのかの例をいくつか紹介しましょう。

この記事で紹介している漢字の使い分け:
あげる(上げる・挙げる) | あく(空く・開く) | あてる(当てる・充てる) | あわせる(合わせて・併せて) | おさえる(押さえる・抑える) | かたい(堅い・固い・硬い) | こえる(超える・越える) | こたえる(答える・応える) | すすめる(勧める・薦める) | つとめる(勤める・務める・努める) | のぼる(上る・登る・昇る) | はえる(映える・栄える) | はかる(図る・計る・測る) | もと(下・元・本) | わく(沸く・湧く) | あやしい(怪しい・妖しい) | かた(形・型) | こう(請う・乞う) | たま(玉・球・弾) | つくる(作る・造る・創る) | その他の使い分け

あげる(上げる・挙げる)

  • 上げる ―― 位置・程度などが高い方に動く。与える。声や音を出す。終わる。

    二階に上がる。地位が上がる。料金を引き上げる。成果が上がる。腕前を上げる。お祝いの品物を上げる。歓声が上がる。雨が上がる。

  • 挙げる ―― はっきりと示す。結果を残す。執り行う。こぞってする。捕らえる。

    例を挙げる。手が挙がる。勝ち星を挙げる。式を挙げる。国を挙げて取り組む。全力を挙げる。犯人を挙げる。

あく(空く・開く)

  • 空く ―― からになる。

    席が空く。空き箱。家を空ける。時間を空ける。

  • 開く ―― ひらく。

    幕が開く。ドアが開かない。店を開ける。窓を開ける。そっと目を開ける。

あてる(当てる・充てる)

  • 当てる ―― 触れる。的中する。対応させる。

    胸に手を当てる。ボールを当てる。くじを当てる。仮名に漢字を当てる。

  • 充てる ―― ある目的や用途に振り向ける。

    建築費に充てる。後任に充てる。地下室を倉庫に充てる。

あわせる(合わせて・併せて)

  • 合わせて ―― 一つにする。一致させる。合算する。

    手を合わせて拝む。力を合わせる。合わせみそ。時計を合わせる。調子を合わせる。二人の所持金を合わせる。

  • 併せて ―― 別のものを並べて一緒に行う。

    両者を併せ考える。交通費を併せて支給する。併せて健康を祈る。清濁併せのむ。

おさえる(押さえる・抑える)

  • 押さえる ―― 力を加えて動かないようにする。確保する。つかむ。手などで覆う。

    紙の端を押さえる。証拠を押さえる。差し押さえる。要点を押さえる。耳を押さえる。

  • 抑える ―― 勢いを止める。こらえる。

    物価の上昇を抑える。反撃を抑える。要求を抑える。怒りを抑える。

かたい(堅い・固い・硬い)

  • 堅い ―― 中身が詰まっていて強い。確かである。

    堅い材木。堅い守り。手堅い商売。合格は堅い。口が堅い。堅苦しい。

  • 固い ―― 結び付きが強い。揺るがない。

    団結が固い。固い友情。固い決意。固く信じる。頭が固い。

  • 硬い ―― 外力に強い。こわばっている。

    硬い石。硬い殻を割る。硬い表現。表情が硬い。選手が緊張で硬くなっている。

こえる(超える・越える)

  • 越える ―― ある場所・地点・時を過ぎて,その先に進む。

    県境を越える。峠を越す。選手としてのピークを越える。年を越す。度を越す。困難を乗り越える。勝ち越す。

  • 超える ―― ある基準・範囲・程度を上回る。

    現代の技術水準を超える建築物。人間の能力を超える。想定を超える大きな災害。10万円を超える額。1億人を超す人口。

※2014-02-24配信メルマガで「越える」と「超える」の解説が逆になっていました。失礼しました。この記事に記載の内容が正しいものです。

こたえる(答える・応える)

  • 答える ―― 解答する。返事をする。

    設問に答える。質問に対して的確に答える。名前を呼ばれて答える。

  • 応える ―― 応じる。報いる。

    時代の要請に応える。期待に応える。声援に応える。恩顧に応える。

すすめる(勧める・薦める)

  • 勧める ―― そうするように働き掛ける。

    入会を勧める。転地を勧める。読書を勧める。辞任を勧める。

    ※行為を促す
  • 薦める ―― 推薦する。

    候補者として薦める。良書を薦める。お薦めの銘柄を尋ねる。

    ※人や物がふさわしい・望ましいと推薦する

つとめる(勤める・務める・努める)

  • 勤める ―― 給料をもらって仕事をする。仏事を行う。

    この会社は私には勤まらない。銀行に勤める。永年勤め上げた人。勤め人。本堂でお勤めをする。法事を勤める。

  • 務める ―― 役目や任務を果たす。

    彼には主役は務まらない。会長が務まるかどうか不安だ。議長を務める。親の務めを果たす。

  • 努める ―― 力を尽くす。努力する。

    完成に努める。解決に努める。努めて早起きする。

のぼる(上る・登る・昇る)

  • 上る ―― 上方に向かう。達する。取り上げられる。

    階段を上る。坂を上る。川を上る。出世コースを上る。上り列車。損害が1億円に上る。話題に上る。うわさに上る。食卓に上る。

  • 登る ―― 自らの力で高い所へと移動する。

    山に登る。木に登る。演壇に登る。崖をよじ登る。富士山の登り口。

  • 昇る ―― 一気に高く上がる。

    エレベーターで昇る。日が昇(上)る。天に昇(上)る。高い位に昇る。

はえる(映える・栄える)

  • 映える ―― 光を受けて照り輝く。引き立って見える。

    夕映え。紅葉が夕日に映える。紺のスーツに赤のネクタイが映える。

  • 栄える ―― 立派に感じられる。目立つ。

    栄えある勝利。見事な出来栄え。見栄えがする。栄えない役回り。

はかる(図る・計る・測る・量る)

  • 図る ―― あることが実現するように企てる。

    合理化を図る。解決を図る。身の安全を図る。再起を図る。局面の打開を図る。便宜を図る。

  • 計る ―― 時間や数などを数える。考える。

    時間を計る。計り知れない恩恵。タイミングを計る。頃合いを計って発言する。

  • 測る ―― 長さ・高さ・深さ・広さ・程度を調べる。推測する。

    距離を測る。標高を測る。身長を測る。水深を測る。面積を測る。血圧を測る。温度を測る。運動能力を測る。測定器で測る。真意を測りかねる。

  • 量る ―― 重さ・容積を調べる。推量する。

    重さを量る。体重を量る。立体の体積を量る。容量を量る。心中を推し量る。

もと(下・元・本)

  • ―― 影響力や支配力の及ぶ範囲。…という状態・状況で。物の下の辺り。

    法の下に平等。ある条件の下で成立する。一撃の下に倒した。花の下で遊ぶ。真実を白日の下にさらす。灯台下暗し。足下(元)が悪い。

  • ―― 物事が生じる始まり。以前。近くの場所。もとで。

    口は災いの元。過労が元で入院する。火の元。家元。出版元。元の住所。元首相。親元に帰る。手元に置く。お膝元。元が掛かる。

  • ―― 物事の根幹となる部分。

    生活の本を正す。本を絶つ必要がある。本を尋ねる。

  • ―― 基礎・土台・根拠。

    資料を基にする。詳細なデータを基に判断する。これまでの経験に基づく。

わく(沸く・湧く)

  • 沸く ―― 水が熱くなったり沸騰したりする。興奮・熱狂する。

    風呂が沸く。湯が沸く。すばらしい演技に場内が沸く。熱戦に観客が沸きに沸いた。

  • 湧く ―― 地中から噴き出る。感情や考えなどが生じる。次々と起こる。

    温泉が湧く。石油が湧き出る。勇気が湧く。疑問が湧く。アイデアが湧く。興味が湧かない。雲が湧く。拍手や歓声が湧く。

◇◇◇

いかがでしょうか。ほかにも、知ると「へー」となる使い分けの基準もあるので、それを以下に示します。

あやしい(怪しい・妖しい)

  • 怪しい ―― 疑わしい。普通でない。はっきりしない。

    挙動が怪しい。怪しい人影を見る。怪しい声がする。約束が守られるか怪しい。空模様が怪しい。

  • 妖しい ―― なまめかしい。神秘的な感じがする。

    妖しい魅力。妖しく輝く瞳。宝石が妖しく光る。

かた(形・型)

  • ―― 目に見える形状。フォーム。

    ピラミッド形の建物。扇形の土地。跡形もない。柔道の形を習う。水泳の自由形。

  • ―― 決まった形式。タイプ。

    型にはまる。型破りな青年。大型の台風。2014年型の自動車。血液型。鋳型。

こう(請う・乞う)

  • 請う ―― そうするように相手に求める。

    認可を請う。案内を請(乞)う。紹介を請(乞)う。

  • 乞う ―― そうするように強く願い求める。

    乞う御期待。命乞いをする。雨乞いの儀式。慈悲を乞う。

たま(玉・球・弾)

  • ―― 宝石。円形や球体のもの。

    玉を磨く。玉にきず。運動会の玉入れ。シャボン玉。玉砂利。善玉悪玉。

  • ―― 球技に使うボール。電球。

    速い球を投げる。決め球を持っている。ピンポン球。電気の球。

  • ―― 弾丸。

    拳銃の弾。大砲に弾を込める。流れ弾に当たって大けがをする。

つくる(作る・造る・創る)

  • 作る ―― こしらえる。

    米を作る。規則を作る。新記録を作る。計画を作る。詩を作る。笑顔を作る。会社を作る。機会を作る。組織を作る。

  • 造る ―― 大きなものをこしらえる。醸造する。

    船を造る。庭園を造る。宅地を造る。道路を造る。数寄屋造りの家。酒を造る。

  • 創る ―― 独創性のあるものを生み出す。

    新しい文化を創(作)る。画期的な商品を創(作)り出す。

その他の使い分け
―― 文化庁の「『異字同訓』の漢字の使い分け例」には133例が

ここに示した使い分けのは、文化庁の文化審議会国語分科会が公開した「『異字同訓』の漢字の使い分け例(報告)」から紹介したものです。

資料では、ここで示したものを含め全部で133の用例が、わかりやすく示されていますので、日本語を扱う方は、ぜひダウンロードして、いつでも参照できるように手元に置いておくといいでしょう。

この資料は、同音で意味の近い語が、漢字で書かれる場合、その慣用上の使い分けの大体を、用例で示したもので、昭和47年に「『異字同訓』の漢字の用法」として作成し、「『異字同訓』の漢字の用法例」として平成22年に追加したものを、改めて整理したもの(資料内には、昭和47年版と平成22年版の情報も、併せて記載されています)。

ただし、「これが正しい」「こうでない用法は間違い」というものではなく、あくまでも「1つの参考として提示」されたものであることに注意してください。

言葉というものは時間とともに使われ方が変わるものですし、分野によっては違った使い方がされるということもあるものです。

また、この資料は「常用漢字に関する使い分け」を記載したものですので、それ以外の漢字については触れていませんし、「漢字で書くか、かなで書くか」といった点についても触れていません。

それでも、参考として手元に置いておく価値があると思います。

文化庁は、日本語に関してほかにも次のような資料を公開していますので、言葉を扱う方はチェックしてみるといいでしょう。

  • 内閣告示・内閣訓令
    • 常用漢字表
    • 現代仮名遣い
    • 送り仮名の付け方
    • 外来語の表記
    • ローマ字のつづり方
  • 参考資料
    • 表外漢字字体表
    • くぎり符号の使ひ方
    • くりかへし符号の使ひ方
    • 公用文に関する諸通知
    • 法令に関する諸通知
    • 外来語の取扱い,姓名のローマ字表記について
    • 「異字同訓」の漢字の用法
    • 「異字同訓」の漢字の用法例(追加字種・追加音訓関連)
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