企業ホームページ運営の心得

商品ラインナップを充実させる“焼き鳥屋理論”

コンテンツを充実させるための商品開発の発想を紹介
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の274

焼き鳥屋とロングテール

Webで訴求しやすいのは「居酒屋」より「焼き鳥屋」です。「居酒屋」ではオススメのメニューが何かいまひとつピンと来ませんが、「焼き鳥」ならお客は看板を見ただけで理解できるからです。鳥に絞り込むことで「SEO」も期待できます。「焼き鳥」とは比喩ですが、テーマを絞り込むことを「焼き鳥屋理論」と名付けています。

一方で、商品やサービスを多く掲載することも推奨します。いわゆる「ロングテール」的な効果とSEOはもちろん、ある程度の選択肢を用意することで、顧客満足度の高まりが期待できるからです。

絞り込めといいながら、商品を多く掲載しろというのはマッチポンプではありません。

間口は狭く、奥行きは深く

ということです。その奥行きは「商品開発」でつくり出します。

スープを替えてみる

その昔、「エコソープ」という商品の売り方を考えるように依頼されました。同名の石けんもありますが、ここでいう「エコソープ」とは、食用油の廃油と、同量の水を一緒に混ぜるだけで食器洗い洗剤になるという特許商品です。しかし、価格は一袋500円と「台所用洗剤」の市場価格から見てかなり割高で、結論を述べればそのまま売るのは困難です。そこで焼き鳥屋理論の「商品開発」を利用することにしました。

鶏の調理方法は「焼き鳥」だけではありません。鳥ピラフ、とりめし、鳥雑炊はほとんど同じ材料でも、調味料と水加減によって別のメニューになります。焼き鳥屋理論においての「商品開発」の発想もこれと同じで、鶏そのものを品種改良するわけではありません。

季節はちょうど今頃。洗剤から教育へとスープを替えてみます。

先生が喜ぶこと

廃油を再利用するエコロジーさが「夏休みの自由研究の宿題」になる、という切り口でA4版の解説書を用意します。解説書には廃油をそのまま下水に流すことの環境負荷と、再利用することのメリットを記します。そのまま「転載」すれば宿題として提出することも可能です。また、「家庭でできるエコ活動を考える」と「発展」させるヒントを記すことで「カンニング」という批判もかわします。

コップ1杯分ほどのエコソープを作るには150mlの水が必要です。そこで、500mlと350mlのジュースの空き缶とボウルを用意します。まず500mlに水を満たしてから、ボウルの中央においた350mlの空き缶にその水を注げば、溢れた分が150mlになるといった方法を紹介します。そしてこうした工夫を先生は喜ぶと解説書に沿えます。

かくして「自由研究エコパック」という商品の完成です。価格は定価の倍の1,000円。台所用洗剤としては高くても、教育市場なら1,000円はリーズナブルな価格帯です。

市販品の商品開発

もっと簡単な方法もあります。「量を変える」です。エコソープの場合、水と廃油それぞれ150mlからできる洗剤は約300ml。使い切るにはすこし多い量です。そこでグッと量を減らします。実用性はなくなりますが、児童が持ち帰れる小瓶程度の量に減らせば、理科の実験教材「エコソープ アカデミック版」のできあがりです。反対に量を増やせばレストランの廃油リサイクル用の「プロフェッショナル版」となります。

市販品でも「商品開発」は簡単です。たとえば、「温泉の素(入浴剤)」を販売していたとします。夏に温泉の素を売るのは大変でしょうか。いや夏だからこその売り方があります。

今年はクーラーによる「冷房病(冷え性)」に加え、「節電冷え」なるものが登場しました。これは、節電のエアコン控えを補うため、冷たい食べ物や飲み物を過剰摂取しておこる「内臓冷え」と呼ばれていたもので、対策として「入浴」をすすめる医師は少なくありません。そこで「夏冷え対策グッズ」として温泉の素を売り出します。正しい温浴の仕方、入浴後の冷えを避ける方法や、エアコンを控えても涼しく過ごす方法などを小冊子にまとめて添えれば「夏冷え温泉パック」の完成です。

これは「入浴剤」から「健康グッズ」へのスープチェンジです。

アマゾンと楽天がパートナーに

1回ごとの使い切りで小分けにされていれば、先に紹介した「量」による商品開発も可能です。たとえば、3袋セットで「お試しパック」、12袋で「週末贅沢パック」と名付けます。3袋の理由は「金曜、土曜、日曜日。冷たいオフィスから離れる週末だから冷え退治」というキャッチコピーで説明します。12袋はこの4週間分です。

毎週末に自宅温泉でリフレッシュ。夏冷え退治の4週間プラン!

とでもうたいます。ちなみに「贅沢」と名付けるのは財布のひもを緩めさせ、高めの値段で売るためのコピーライティングにおいての常套手段です。

「商品開発」には「セット販売」という方法もあります。まずは「長湯セット」。防水ラジオ、防水テレビ、防水のDVDプレイヤーをセットにして売ります。在庫を持っていなくても、注文が入ってから「アマゾン」に発注をかけても間に合うでしょうし、他には「濡れても読める本」などもあります。さらには風呂上がりの水分補給に「活性水素水」や、「ハーブティー」を楽天市場のショップから仕入れて売るのもアリです。また、湯上がり用のバスタオルやバスローブを「ZOZOTOWN」から購入して転売するのもOKです。

焼き鳥屋の正体

温泉という商品特性から、その地域の「特産品」をセットにする方法もあります。「自宅でゆったり贅沢三昧」とでも名付けて、温泉の素と、その温泉の地域特産品をセット販売するのです。地域といっても厳密にしぼることはなく、有馬温泉なら神戸ビーフぐらいまで範囲を広げてもよいでしょう。また湯上がりといえば「ビール」。地ビールと組み合わせて「湯上がり爽快パック」も喜ばれそうです。

  • 夏冷え
  • お試し
  • 4週間プラン
  • 長湯
  • 湯上がり
  • 特産品

市販の温泉の素からでも、これだけ奥行きを深く、つまり商品ラインナップを充実させることができます。すべてが「温泉の素」でつながっているところが「焼き鳥屋理論」です。そしてこの理論、すべてのサイトで効率よくコンテンツを充実させるためにも使えます。

今回のポイント

絞り込んでから奥行きをつける

その奥行きがサイトの厚みとなる

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