【全5回配信】デジタル戦略によって実現される、顧客経験価値の創造【1】事例(スターバックスコーヒー)から読み取る進化型エクスペリエンスデザインとは?

スターバックスコーヒーの事例から読み取る進化型エクスペリエンスデザインについて解説します。
※この記事は読者によって投稿されたユーザー投稿のため、編集部の見解や意向と異なる場合があります。また、編集部はこの内容について正確性を保証できません。

スターバックスコーヒーのミッションステートメント

スターバックスコーヒーは、ミッションステートメントで以下のように表明しています。

Our Starbucks Mission Statolent

    "Our mission: to inspire and nurture the human spirit – one person, one cup and one neighborhood at a time. "
    "人々の心を豊かで活力あるものにするために-ひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから"

さらに、ミッションステートメントに続く6つの原則の一つ Our Customers において以下のように表現しています。

Our Customers

    “When we are fully engaged, we connect with, laugh with, and uplift the lives of our customers – even if just for a few moments. Sure, it starts with the promise of a perfectly made beverage, but our work goes far beyond that. It’s really about human connection. ”
    "心から接すれば、ほんの一瞬であってもお客様とつながり、笑顔を交わし、感動体験をもたらすことができます。完璧なコーヒーの提供はもちろん、それ以上に人と人とのつながりを大切にします。"

スターバックスコーヒーのエクスペリエンスデザイン

東日本大震災の直後、スターバックスコーヒーのグローバルサイトのトップページは日本への支援を呼びかけるものとなっていました。日本企業は大手企業を中心に、自社コーポレートサイトにおいて東日本大震災に関連する表明を行っていましたが、グローバルメガブランドの中で、グローバルサイトにおいてこのような訴えかけをした企業は多くはなかったはずです。
 このサイトを見たときに、私自身、心動かされるものがありました。このサイトは、“人と人とのつながり大切にする”スターバックスコーヒーのミッションステートメントを体現し、私たちの心に強く訴えかけるものをもっていました。スターバックスコーヒーは、「第三の空間」のコンセプトに基づくリアル店舗での快適な顧客体験の提供にとどまらず、Webサイトを中心とするデジタル空間においても“感動体験”を提供し続けています。スターバックスコーヒーは、リアル、デジタルを問わず、すべての顧客接点を通じて顧客の心に訴えかける"Starbucks Experience(スターバックス体験)"をデザインする意識が会社のすみずみまで行きわたり、実際にそれが実現できている会社と言うことができるのではないでしょうか。

エクスペリエンスデザインの定義

B. Joseph Pine IIとJames H. Gilmoreが、エクスペリエンスエコノミーの概念を発表して以来、カスタマーエクスペリエンス(顧客体験)と優れたカスタマーエクスペリエンス実現の手段としてのエクスペリエンスデザインが注目されるようになりました。今回、カスタマーエクスペリエンスを以下のように定義します。
「企業の提供するサービスにおける、すべてのタッチポイント(顧客接点)を通じての企業とのインタラクションによる顧客の総合的な体験」

さらに、エクスペリエンスデザインを以下のように定義します。
「快適なカスタマーエクスペリエンス(顧客体験)を実現するためのサービスの“機能”と“コミュニケーション”のデザイン」

エクスペリエンスデザインの重要性

カスタマーエクスペリエンスは、デジタルコンテンツを伴うサービスの領域では、特にユーザーエクスペリエンスという言葉により、研究と実践が進んでいます。(カスタマーエクスペリエンスは、ユーザーエクスペリエンスを包含するより広義の概念になります)ユーザーエクスペリエンスの領域で最も著名な書籍である『The Elolents of User Experience』において、著者Jesse James Garrettは、ユーザーエクスペリエンスの重要性を以下のように述べています。

    "Businesses have now come to recognize that providing a quality user experience is an essential, sustainable competitive advantage. It is user experience that forms the customer’s impression of the company' s offerings, it is user experience that differentiates the company from its competitors, and it is user experience that determines whether your customer will ever come back."
    "企業は、今や、「質の高いユーザーエクスペリエンスの提供は不可欠なものであり、持続可能な競争優位である」ということを認識するようになった。企業が提供するものに対する顧客の印象を決めるのは、ユーザーエクスペリエンスである。競合企業からその企業を差別化するのは、ユーザーエクスペリエンスである。さらに、顧客が戻ってくるかどうかを決めるのもユーザーエクスペリエンスである。"

上記のように、Jesse James Garrettは、ユーザーエクスペリエンスの重要性を強調しています。したがって、企業にとっては、その実現手段としてのエクスペリエンスデザインをどう構想し、どう実現していくかが非常に重要であるということができます。

エクスペリエンスデザインの要素

エクスペリエンスデザインは、ビジネスの現実と技術的可能性を考慮しながら、顧客のニーズ・願望を充足するためのデザインです。

ビジネスの観点からは、まず、エクスペリエンスデザイン実施の前提となるビジネスの環境、ビジネス戦略、ビジネス上の目標を確認します。そして、新たなエクスペリエンスのデザインによって、既存のビジネスモデルをどう変革できるのか、あるいは、エクスペリエンスのデザインにより、競争優位性のある新規のビジネスモデルを構築することができるのかを評価します。

顧客のニーズ•願望充足のためには、以下の2つの側面から考える必要があります。つまり、顧客の「機能的なニーズ」を満たすと同時に「エモーショナルな願望」を満たしていくことが重要となります。そのためには、エスクスペリエンスデザイン固有の各種手法を駆使しながら顧客のニーズ・願望をより正確に理解していくことが求められます。

また、モバイルテクノロジーやソーシャルテクノロジーを中心とするテクノロジーの進化はますます加速しており、それらのトレンドを把握した上で、利用可能なテクノジーの評価と活用が、エクスペリンスデザイン実施上の重要な要素となります。

優れたエクスペリンスデザインの実施のためには、プロジェクトの初期段階において、これらの相互関連する3つの要素を総合的に判断し、明確なエクスペリエンス戦略を立案していくことが不可欠となります。

スターバックスコーヒーのエクスペリエンスデザイン戦略

スターバックスコーヒーは、Facebookのファンページのファン数では20,420千人(2011年4月4日現在)でコーポレートブンランドの中で、Facebook(37,077千人)、CoCa-Cola(30,140千人)に続く3位となっています。また、Twitterのフォロワー数では、1,374千人(2011年4月4日現在)でコーポレートブンランドの中で34位(1位は、Twitterの4,766千人)となっています。
スターバックスコーヒーは、1万数千のリアル店舗を中心に事業展開する企業でありながら多彩なソーシャルメディアへの取り組みを中心とする積極的なデジタル戦略によって、リアル、デジタルの両面においてグローバルメガブランドとしての地位を確立しています。
スターバックスコーヒーは、それぞれのデジタルチャネル(顧客接点)が、その特徴を生かしながらそれぞれの顧客と差別化された関係を構築可能であることを理解し、ソーシャルテクノロジーを活用して快適な顧客経験を提供しています。
例えば、MyStarbucksIdea.comでは、人々が自らのアイディアを投稿し、他の人のアイディアにコメントし、お気に入りのアイディアに投票します。ユーザーはこのサービスへの関与を通じて、スターバックスコーヒーの経営に自分自身が関わっていると感じることができます。
さらに、ユーザーは、Ideas in Action blogにより、投稿されたアイディアがその後どうなっているのをつぶさに知ることが可能となっています。これらを通じて、顧客のスターバックスコーヒーへのロイヤルティは確実に高まっていきます。

Twitterは、スターバックスコーヒーと顧客あるいは、顧客間のリアルタイムコミュニケーションのツールとして利用されています。

Facebookのファンページでは、多数のビデオ、ブログ、写真等のコンテンツに加えイベント情報も提供されています。そして、ファンページはスターバックスコーヒーについての理解をより深め、議論し、コメントする場となっています。

Starbucks You Tube Channelは、約9,400人(2011年4月4日現在)が登録しており、CMビデオとともに豊富なコンテンツによるインフォメーションビデオがアップロードされています。

myStarbucks iPhone Appは、iPhone向けアプリで、店舗検索やbuilder機能により自分の好みのドリンクを組み立てることが可能です。また、ドリンク、フードメニュー、コーヒー豆等の詳細な情報を確認することができます。

Starbucks Card Mobileは、BlackBerry版とiPhone / iPod Touch版があり、米国の直営店を中心に商品購入に利用可能です。このアプリでは、スターバックスカードの残高を確認し、主要なクレジットカードからリロードすることが可能です。また、My Starbucks Rewardsプログラムとも連動しており、Starsポイントの獲得状況を追跡できます。

スターバックスコーヒーは、2011年3月、新たに導入するサービスとしてthe Starbucks Digital Networkを発表しました。the Starbucks Digital Networkは、6つのチャネルからなるデジタルコンテンツの提供サービスで、米国内のスターバックスコーヒー直営店において、無料Wi-Fiネットワークを通じて、ラップトップパソコン、タブレットおよび、スマートフォンによって利用可能となっています。(日本の店舗で提供されていないのが非常に残念です)

以下の6つのチャネルでは、Yahoo、The Economist等との提携により豊富なコンテンツが提供されます。特に、6つ目のチャネルであるStarbucksでは、MyStarbucksIdea、Starbucks Coffee Blog等の既存のソーシャルメディア関連サービスが提供されます。

    News & Sports: Digits (WSJ technology blog), WSJ.com, The Economist, GOOD, New York Times Reader 2.0, USA TODAY eEdition, ESPN Insider Rumor Central and Yahoo! News.
    Entertainment: iTunes, Bookish Reading Club, Marvel Comics, New Word City, Nick Jr. Boost, SnagFilms, Starbucks Entertainment and Yahoo! entertainment offerings.
    Wellness: Rodale with Men’s Health, Women’s Health, Runner’s World, Bicycling, Prevention, Organic Gardening, TrainingPeaks, Eat This, Not That! and Rodale Books.
    Business & Careers: LinkedIn, Mediabistro, Starbucks Careers and Yahoo! Finance.
    My Neighborhood: DonorsChoose.org, Flickr, Foursquare, Patch, and Zagat.
    Starbucks: MyStarbucksIdea, Starbucks Coffee Blog, Starbucks Nutrition, Starbucks™ Shared Planet™, Starbucks Card and My Starbucks Rewards.

さらに、ランディングページでは、Foursquareへのチェックイン、Starbucks Cardへのログイン、Facebook、Twitter、MyStarbucksIdea、YouTube等のソーシャルメディアを集約したダッシュボードが実装されます。
このように、the Starbucks Digital Networkは、“第三の空間”である店舗での“Starbucks Experience(スターバックス体験)”をさらに洗練する統合的なデジタルコンテンツ提供サービスとなっています。
スターバックスコーヒーのエクスペリエンスデザイン戦略は、リアルおよび、デジタルの両領域のエクスペリエンスの最適の組み合わせ(ポートフォリオ)を計画した上で、個々の顧客接点において提供する一つひとつの顧客体験と、それらを統合した“Starbucks Experience”をデザインし、提供するための戦略となっています。これは、製品戦略、価格戦略、店舗戦略等を中心とする一般的な経営戦略とは完全に一線を画しています。

以上のように、スターバックスコーヒーは、最先端のエクスペリンスデザインを企業の総力を上げて実現している企業の一つです。我々は、スターバックスコーヒーをモデルとして、自社としての特徴を生かしたエクスペリンスデザインを計画し、実践していきたいものです。

 

■本コラムの元記事はこちら
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