初代編集長ブログ―安田英久

信頼性の高いオウンドメディアを作る10のガイドライン by スタンフォード大学

Webサイトの信頼性を高めるにはどうするべきか+信頼に足りるメディアとするために大切なこと
Web担のなかの人

今日は、「オウンドメディアの信頼性」について。スタンフォード大学が発表した「Webの信頼性ガイドライン」や既存メディアの動き方などを参考に、どうすればオウンドメディアの信頼性を高められるかを紹介します。

オウンドメディアを運用するにあたって、訪問者にそのコンテンツやサイトを信頼してもらえるかは大きなポイントです。「ウケればいい」という考え方もある意味では否定しません。しかし、長年メディア業をやっている人間として、また、企業のビジネス活動の一環としてのオウンドメディアという立ち位置を考えると、やはり「信頼性」は重要視したいところです。

しかし、サイトやコンテンツの信頼性は、どのようにすれば高められるのでしょうか。

Webの信頼性に関するスタンフォード・ガイドライン

スタンフォード大学が、「Webの信頼性に関するスタンフォード・ガイドライン」という、10項目からなるガイドラインを公開しています。

どうすればWebサイトの信頼性を高められるかという観点で、4500人に対して3年にわたって行った調査をもとに作ったガイドラインで、内容は次のとおりです。

  1. サイトにある情報の正確性を検証しやすいようにする

    Webサイトに掲載する情報には、第三者による引用・参照・原典などの補助情報を添え、さらにそれらにリンクすることで、サイトの信頼性を強化できる。たとえ訪問者がリンク先にアクセスしなくても、情報の信頼性を示すことになる。

  2. サイト運営しているのが実際の組織であることを示す

    サイトが正当な組織によって運営されていることを明示することは、サイトの信頼性を増す。最も簡単なのは、実際の住所を示すこと。オフィス電話番号の掲載や、商工会議所などに所属していることを示すのも役に立つ。

  3. 組織・コンテンツ・サービスにおける専門性を強調する

    チームに専門性があったり、権威者が協力していたりサービスを提供していたりするのならば、そのことを明らかにする。評判のいい組織と提携しているならば、それを明らかにする。逆に言うと、信頼性のない外部サイトにはリンクしない。そうすることによってサイトの信頼性が下がる。

  4. サイトを運営しているのが誠実で信用に足りる人間であることを示す

    Webサイトや組織の向こうに現実の人間がいることを示したうえで、その信用度を伝えるために画像やテキストを利用する。たとえば、従業員の略歴を、家族や趣味も含めて掲載しているサイトもある。

  5. 連絡を容易にとれるようにする

    サイトの信頼性を高める簡単な方法は、電話番号、住所、メールアドレスなどの連絡先情報を明確に示すことだ。

  6. サイトのデザインを、プロフェッショナルに見えるもの(または目的に合ったもの)にする

    人々は見た目のデザインだけでサイトを素早く判断する。サイトのデザインでは、レイアウト・文字組・画像・一貫性などに注意すること。ただし、IBM.comのように見えるサイトを作ったからといって、どんなサイトでも信頼性を得るわけではない。サイトのビジュアルデザインは、サイトの目的に合致していなければいけない。

  7. サイトを使いやすく、有益にする

    このガイドラインには2つの要素がある。調査では、「使いやすい」ことと「有益である」ことで信頼性ポイントを得ていた。サイト運営者は、自社の主張や新しいWeb技術を見せつけることに夢中で、ユーザーのことを忘れてしまうことがある。

  8. サイトのコンテンツをよく更新する(または見直したことを示す)

    人々は、最近コンテンツを更新したり見直したりしているサイトに対して、より信頼性をおく。

  9. 広告や値引きなどのプロモーションコンテンツは抑制する

    可能ならば、サイトには広告を掲載しないようにする。広告が必要な場合でも、自サイトのコンテンツと広告コンテンツを明確に区別できるようにする。ポップアップ広告は、訪問者をイライラさせて信頼性を下げたいのでなければ、避けること。文体に関しては、明確で、直接的で、誠実であること。

  10. エラーはどんなものでも避ける。どれだけ小さなものでも

    書き間違いやリンク切れは、一般に考えられているよりも、サイトの信頼性を損なうものだ。また、サイトにちゃんとアクセスできる状態にしておくことも重要だ。

このガイドラインは、スタンフォード大学がMakovsky社のスポンサーで行い2002年に発表したものです。少し古い部分もありますが、人間が「信頼性」を判断するにおいて、根本的には大きく変わっていないと思います。

信頼性は受け手がどう認知するかの問題

「信頼性を高める」といいますが、「信頼性」は、受け手がそのサイトや情報をどうとらえるかの問題だとも言えます。

実際に、トピックに関する知識をどの程度もっているかによって、どういった点で信憑性を評価するかが異なるという調査もあります。

ということは、信頼性の高いサイトを作るということは、「どんなユーザーにとって信頼性が高いと認知されるサイトにしたいか」つまり主要ユーザーセグメントを定めなければいけないということでもあります。

ThinkStock/iStock/Devonyu

また同様に、「信頼は、信頼する側の目標など、状況によってその範囲が限定される」としたうえで、情報の信頼性評価を、

  • 発信者(発信者の識別、発信者の意図に対する期待、発信者の能力に対する期待)
  • 情報の皮相的特徴
  • 情報の意味内容
  • 情報の評判

のように分けて論じている文献もあります。

「信頼性をどう評価されるか」に関しては、こうした情報が役に立つでしょう。

しかし、もっと大切なのは、「信頼に値するコンテンツやサイトを作るには、どうすればいいか」ではないでしょうか。

メディアが行っている信頼性のための努力

Webのように気軽にだれでも情報発信できるようになる以前からの既存のメディアは、基本的に、発信する内容に関して多大なるチェックを行い、信頼性を損なうものにならないように、努力しています(一部、異論のある部分はあるかと思いますが、基本として)。

例として最もわかりやすいのは、ニュースなどでよくある「専門家の意見を添える」ということですね。情報を発信する主体が情報すべてに関するスペシャリストであるとは限らないので、必ずそのトピックに詳しい専門の人にコメントしてもらうことで、内容の信用度を担保するという形です。

ThinkStock/iStock/DragonImages

また、専門メディアでは、その内容を可能な限り「検証」しています。

たとえばニュース情報ならば、必ず一次情報に当たり、確認します。

メールで送られたプレスリリースをそのままコピペするなんてことは、しません。必ず企業サイトに行って、実際にそのリリース内容が掲載されているか確認しますし、必要に応じて広報さんに電話して内容を確認します。

書籍や雑誌では、その内容が正しいかを必ず確認しています。

私は、技術書を担当していた時代、原稿に記載されているすべてのプログラミングコードは実際に動作させてみたり、書かれているとおりに実際にサーバーを構築してみたりして、可能な限り、内容が間違っていないかチェックしていました。

自分では手に負えない高度な内容の場合は、知人に頼んですべてのコードを検証してもらいました。

Web担をやっている今でも、そうした方針は変わっていません。

自分で調査できる一次情報があるのならばそれを調べますし、統計、経理、法律などの自分が専門ではない分野では、社内外の専門家に確認を依頼します。

また、「この内容は検証しておくべきか」をチェックする立場は、複数設けています。具体的には、少なくとも、

  • 筆者さん
  • 担当編集者
  • デスク・副編集長・編集長など

の3回、内容の正確さに関するチェックが行われているかを確認できるようになっています。

企業のオウンドメディアであっても、こうした「検証」が必ず行われるワークフローを設けておくことは、大切でしょう。

データで検証できない「信頼性」は無駄? いえ、ビジネスの根幹ですよ

残念ながら、バイラルメディアなどへの一般的な反応を見るに、「信頼性」を気にしない人は、思ったよりも多いようです。

また、簡単にデータ化しづらい(指標化するコストが高い、正確性に劣る)という点は、「好感度」「想起率」などと同様に、「信頼性」の弱点です。

さらに言うと、現在はグーグルも「情報が正しいか」「信頼できるか」というチェックは、できません。

「オーソリティ」が検索順位の要因になっているといわれますが、あくまでもリンクという「信頼性評価の代替物」による評価であり、多くの人が勘違いしていたり間違ったりしていれば、グーグルの評価もそれに引っ張られます。

コンテンツの執筆者による評価の導入も、一時期ほど積極的には進めていないようです。

しかし私は、信頼性こそがメディアの本質だと思っています。なぜなら、それが、中長期的にはビジネスの根幹にあるもの(それを損なうとビジネスに大きな影響がある)であるからです。

あなたにも、まずは「オウンドメディアとは信頼されることが大切だ」という意識をもっていただき、そのうえで、ここで紹介した内容などを参考に、さらに信頼に足りるメディアとして運用し、それを訪問者に伝えられるようにしていっていただけると、うれしいです。

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